今回は、製図試験対策上重要な一発アウト項目の語呂合わせPart1を紹介します。
製図試験受験生がエスキスや作図の練習で必ずやってしまうミスってありますよね。
「延焼ラインを忘れた!!」
「○防を忘れてしまった…」
「陸屋根を描き忘れた。。」
挙げたらキリがありませんね。(笑)
せっかく長い間勉強して合格ラインに達しているのにも関わらず、
毎年、本番でもこういった受験生が多く見られます。こういった取るに足らないミスで一年の努力が水の泡になってしまってはたまったものではありません。
そこで、完全網羅版・ふじやま式製図チェック用語呂合わせを開発しました。今回は、語呂合わせPart1をご紹介します。(Part2は次の記事です。)
製図試験では、エスキス力・作図力だけではなく、”チェック力”も実力のうちの一つです。早めに作図を仕上げたあとに必ず最初にメモしたエスキス用紙にこれから紹介する語呂合わせで確認しましょう。
では、ふじやま式語呂合わせPart1を紹介します。
語呂① 「 H な倉庫 の WC、空 水 電 消 (えた)! 」
読み方 : エ〇チなそうこのトイレ、くうすいでんしょう(きえた)!
あるエ〇チな倉庫にあるトイレを使っているときに、突然エアコンが止まり、水も流せず、電気が消えるという絶望的な状況。考えただけで恐ろしい・・・。
はい、内容はこのへんにして、一つ一つ解説していきましょう(笑)
①「H」 = 庇・屋根
「H」は、庇の頭文字「ひ」を指します。
庇と一緒に「屋根」を忘れずにチェックしましょう。
描き忘れていたら上下階不整合とみなされるので一発アウトです。
庇と屋根はいずれも2,3階平面図(基準階)に反映されます。
「庇」の位置は、建物の主出入口(▲)と通用口(△)の直上にあります。
「屋根」は、必ず下階の柱(🔲)の直上にあります。
例えば、2階の屋根をチェックをする場合は、下階である1階の柱の位置を確認すること。シンプルで確実な方法です。
特に、凹凸が多い建物形状となった場合に混乱しやすいので、必ず下階の柱(🔲)の位置で判断すること。エスキスの見直し段階で、下階(1・2階)の柱に「二重丸◎」して屋根チェックを忘れないようにするほうが無難でしょう。
庇の位置をチェックする際、特に気をつけておきたいことは、
原則としてセットバックの後退距離から除外されません。しかし、例外があります。
庇のセットバック算定の例外規定
①庇の寸法が敷地の間口の5分の1以下
②道路境界からの距離が1m以上
③庇や屋根の高さが道路の中心から5m以下
重要なモノから順番に並べました。
上記の3点全てを満たすときにセットバックの後退距離から除外されます。
一部ではなく、「全て」ですよ。厳しいんです。
特に気をつけたいのは、①の間口5分の1以下です。
例えば、1面接道の縦長敷地の場合、間口32mに対しては32×(1/5)=6.4mまで庇の間口を作ってもOKです。しかし、庇の間口が合計7mの場合は、セットバックしたとみなされないため、計画建物が道路斜線制限に引っかかってしまい一発OUTになります。
例えば、アプローチを3つ(メイン①・メイン②・管理用)を設けた場合に、
それぞれの入り口の間口が3m,3m,2mとすると合計8mとなります。
この場合は入り口をピロティ形式にして庇が不要となるように工夫します。
例えば、メイン①に庇設置、メイン②をピロティ形式にした場合の庇の合計間口は、
メイン①3m+管理2m=合計5m<6.4mとなり、セットバックしているとみなされるので、道路斜線制限をクリアできます。
②倉庫&便所
忘れがちなものの定番。メイン部門と管理部門でそれぞれ各階に必要です。
特に製図試験で指定される規模の建築物の場合、床面積の合計2,000㎡以上の特別特定建築物は、バリアフリー法の円滑化基準に適合しなければなりません。
便所は車いす使用者便房を1台以上をメイン部門に設けることが義務です。
円滑化誘導基準を指定された場合も同様に多機能便所を計画しましょう。
③空(空調機&PS,DS)
最もポピュラーな空調方式、空冷ヒートポンプパッケージ方式(通称:ヒーポン)です。
空冷ヒートポンプパッケージ方式(上階から順番)
・ヒートポンプ室外機置場(屋上or地上設置)
・冷媒管用(PS)&給還気ダクト(DS)(DS:床置きダクト接続型のみ(天井5m超))
・床置きダクト用室内機(天井5m超)(機械室)
原則は、ヒートポンプ室外機置場とPSのみです。
室内機は室外機と常にセットで考えますが、平面図には指定が無い限りは表記しなくてかまいません。もし、天井カセット型を表記をする場合は、点線で30㎡に1機を1㎡弱の四角で等間隔で表記しましょう。
天井高さが5m超の室(大空間)の場合は、暖気などが天井付近で滞留するため空調効率が悪くなることから、大空間部分の室専用の床置きダクト接続の室内機を設置する機械室を設けます。機械室の直上にはDSを忘れずに描きます。
例えば、2Fに機械室があるとしたらその直上の3FにDSと平面図表記します。
単一ダクト方式(上階から順番)
・空冷ヒートポンプチラー(HPC)(屋上or地上設置)
・冷温水管用(PS)&給排気ダクト(DS)
・エアハンドリングユニット(AHU)(機械室)
製図試験対策上、次に利用されている単一ダクト方式(通称:単ダク)です。
主に、特殊な用途(例:劇場、美術館、図書館など)でかつ全階安定した空調方式で採用されます。
こちらは全て設置が必要なものです。平面図上で全て反映されます。
※勾配屋根の場合は、室内ではなく屋外に設置することで空気の熱(=ヒートポンプ)を利用できます。管理部門に近接した地上に室外機置場orHPCを計画しましょう。
④水(増ポンor受ポン&PS)
製図試験では、①水道直結増圧方式と②ポンプ直送方式のいずれかを採用します。
どちらもポンプ室が必要なことに注意しましょう。
①水道直結増圧方式
→ 増圧ポンプ室のみ(5㎡程度)&給排水PS(1m×1m×n箇所)
水道本管から給水するためには増圧ポンプによって、ポンプアップします。
通常の低層建物(1F~3F)の場合には、経済性や省スペースを考慮して、水道直結直圧方式を採用しますが、製図試験では建物の床面積が大きいことや特殊な用途であることを考慮し、水道直結増圧方式を採用します。
増圧ポンプ室は5㎡程度で十分なので、メンテナンス性や維持管理、省スペース性などを踏まえて、1F管理用階段下に設けましょう。
PSは給水のみですが、通常の利用であれば給水箇所には必ず排水ポイントがあるので、
給水・排水をまとめて計画する給排水PSを1m×1m程度で計画します。
よって、水廻り部分の周りで最低4グリッドに1つ、PSを計画しましょう。
②ポンプ直送方式
→ 受水槽&加圧ポンプ室(20㎡~)&給排水PS(1m×1m×n箇所)
水道本管から一旦設置した受水槽に貯水し、加圧ポンプによってポンプアップして給水箇所に上水供給します。受水槽とポンプは併設して受水槽室に設けます。
PSは増圧方式と同様に給水箇所付近に計画しましょう。
ただし、ポンプ直送方式の場合は受水槽室の直上に給排水PSが必要です。
例えば、1階に受水槽室があるとします。もし、2階の直上にPSが無い場合、
1階と2階の間にある天井ふところ部分で給排水PSが横引き配管されているとみなされ、天井裏から漏水や騒音のリスクがある計画として減点されるからです。
給排水PSは原則スラブ上で配管するために、受水槽室の直上にはPSを必ず計画しましょう。
受水槽・ポンプ室だけではなく各階のPSも忘れたら即失格なので気を付けましょう。
⑤電(電気室or屋外型キュービクル&EPS)
受変電設備であるキュービクルを設置する電気室(30㎡~)も忘れずに計画しましょう。
建物の床面積に余裕が無い場合、キュービクルを屋外(屋上or地上)設置することもありま
すが、キュービクルの耐久性や安全性に配慮して、原則は1階電気室内に計画します。
EPSについては、管理が行いやすい廊下に各階に点検口を面して2m×1m程度。1か所計
画します。メンテナンスする際に必要な間口は1m程度あれば十分です。
各階にEPSが無い場合は即失格なので、要注意です。メインEV・階段と隣接した位置に設けることを習慣化しましょう。
もし忘れた場合は、管理ゾーンにある倉庫内に設けることで対処できます。
⑥消(消火ポンプ室) 2m×3m程度
屋内消火栓設備のための消火ポンプ室は、消防法の設置規定による面積の大小により必要・不要問わず、1階管理用階段下に増圧ポンプ室と同じ箇所に設けましょう。本来であれば不要である場合でも、ポンプの設置スペースはそれほど必要でないので、あるに越したことないので、必ず描きましょう。
主に初期火災に対応しうるもので、水源は床下ピット(基礎部分の上端)を利用します。
消防隊が来るまでの間に建物火災の被害を最小限に抑えるために、一般人が消火器同様に操作が可能です。
断面図で管理用階段下付近を切断する場合には、水源(消火水槽)の明記が必要です。
また、火災によって電気系統が故障するケースがあるため、
屋内消火栓設備の消火ポンプ室付近の電気室内にはキュービクルの他、非常用自家発電設備(1m×2m程度)を設置する必要があります。
・自動火災報知設備 原則必要。→ 全階に設置。
・連結送水管設備 (地階除く)階数7以上。 → 3階以上に設置。
・スプリンクラー設備 不要。
・不活性ガス消火設備 電気室、駐車場で200㎡(~)以上。 → その箇所に設置。
(ハロゲン・粉末)
正確な数値を知りたい場合は、消防法の設置基準で調べましょう。
ただし、試験対策上、スプリンクラーの場合は11階超えor延べ面積が6,000㎡超、連結送水管は5,6階で延べ面積が5,000㎡超えといった大規模な問題は過去問でも出なかったから、上記メモの通り覚えれば問題ないです。
これらの消火設備は実際に平面図に描くことはありませんが、記述の問題などで、
Q.消火設備計画について考慮したこと。
と出題された場合に「何が必要で、何のために設置する必要があるか」を確認しましょう。
H → 庇(間口1/5以下) 屋根 「各2,3F」 倉庫・WC(多WC) → 「各階」
空→ ヒーポン方式:「室外機(屋上or地上)&冷媒管用PS・(大空間)給還気DS&機械室」
単ダク方式:「HPC(屋上or地上)&冷温水管用PS&給排気DS&機械室」
水→ 増ポン方式:「増ポン室(階段下)&給排水用PS」
受ポン方式:「受ポン室&給排水用PS(直上)」
電→ 受電方式:「電気室or屋外Q(屋上or地上)&EPS」
消→ 「消ポン室(階段下)」
最後までご覧いただきありがとうございます。いかがだったでしょうか。
特に、これらの一発失格項目は厳しく見られるため絶対に落とさないように試験開始と同時に、最初にエスキス用紙にまとめることをお勧めします。
次回は、今回の内容の続きとなる一発アウト項目の語呂合わせPart2となります。
それでは、また。