今回は「階高5,000mm」の階段について学んでいこうと思います。前回・前々回に描いた階高4,000mm・4,500mmの階段は、いわゆる「折り返し階段」「1回転階段」でした。階高5,000mm以上の階段に関してはこれらの階段の「1.5回転」ですべて対応可能となります。
「階高5,000mmの階段を描くのが苦手・・・」と感じる受験生は多いですが、実は非常に簡単andシンプルです。決して恐れる必要はありません。階高4,000mmの階段を描くことができれば、ひと手間加えるだけでなんと階高5,000mm出来上がります。難しく考えなくてノープロブレムです!
今回は階高4,000mmの階段をベースに考えるため、階高4,000mmの階段の記事を先に読んで頂くことで本記事の内容をスッキリ理解できると思うので、未読の方はぜひこちらをご覧ください。
製図試験では要求室の特記事項の中で天井高や階高が指定される可能性があるため、自分で階高を設定する必要があります。試験採点官は階段の寸法や段数が合っているかを必ず採点するため、階段と高さの不整合が起きている場合には欠格要件に該当します。
したがって、今回の階段パターンも正確に把握して確実に描き切れるように練習しましょう。本記事を読むことで、他の階段パターンにも応用できる考え方を習得できるので、ぜひ最後まで読んでください。
では、解説していきます。
・階高5,000mmの階段寸法と必要段数
・利用者用階段①(7mスパン)の描き方
・利用者用階段②(6mスパン)の描き方
・管理用階段の描き方
・さいごに
まず、基本的な階高である5,000mmの場合について利用者用・管理用で分けて考えます。
・階高5,000mmの階段寸法と必要段数
利用者用:踏面300mm・蹴上160mm・階段及び踊場幅1,400mm
階高5,000mm÷蹴上160mm=31.25段 → 32段 (踏面枚数は31枚)
管理用:踏面240mm・蹴上200mm・階段及び踊場幅1,200mm
階高5,000mm÷蹴上200mm=25段 (踏面枚数は24枚)
円滑化誘導基準に基づく利用者用階段・建築基準法施行令に基づく管理用階段の寸法によって、階高5,000mmの場合に必要な階段の段数は、利用者用32段・管理用25段となりました。これらの階段寸法と段数について理解すれば、階高5,000mmの階段を描けるようになります。
では、利用者用階段①をご覧ください。
・利用者用階段①(7mスパン)の描き方
(※製図本番の試験では1階の階段は一部略しますが、本記事においては階段の寸法を確認できるようにするために全ての段数・踏面枚数を描くことにします。)
前提として1.5回転の階段を考える場合は、まずはじめに上・下階をそれぞれ分離して考えます。(上階と下階では描き方が異なるため。)今回は1階の階高を5,000mmと仮定して2階へ続く折り返し階段を作ります。1.5回転の場合には、描き終えた後にチェック用に踏面の枚数を上記のように目印をつけましょう。(↑⑤・↑⑩など)
この1.5回転の折り返し階段は段数32段で構成されています(最低32段必要なのでOK!)
踏面300mm以上・蹴上160mm以下・階段幅及び踊り場を1,400mm以上を確保できている階段です。
階高5,000mmの階段は階高4,000mmの階段と同形(同じサイズ)で考えればOKです。
ただし、階高が異なるため、階高4,000mmの場合で描いた階段の段数を増やすor減らすといったひと手間が必要となります。
「階高5,000mmの階段」を描くには「階高4,000mmの階段」を比べると分かりやすいです。下図をご覧ください。
・利用者用階段①(7mスパン)の描き方
1階・2階共通で階高4,000mmの階段とサイズが同じですが、赤線の段を消して描きます。(正確に言えば始めから描かなくてよいです。)
次に、2階も1階と同様に描きます。しかし、階段を1.5回転する場合、33段分描くこととなってしまうため、1段だけ段数が多くなってしまいます。階高5,000mmの階段を上り切る必要段数は32段であれば十分なので、2階の最後の「1段分」だけ減らすという段数処理を行います。
・利用者用階段②(6mスパン)の描き方
同様にして1.5回転の階段を考える場合は、まずはじめに上・下階をそれぞれ分離して考えます。(上階と下階では描き方が異なるため。)今回は1階の階高を5,000mmと仮定して2階へ続く回転階段を作ります。1.5回転の場合には、描き終えた後にチェック用に踏面の枚数を上記のように目印をつけましょう。(↑⑤・↑⑩など)
この1.5回転の回転階段は段数32段で構成されています(最低32段必要なのでOK!)
踏面300mm以上・蹴上160mm以下・階段幅及び踊り場を1,400mm以上を確保できている階段です。
6mスパンの階段も同様にして「階高5,000mmの階段」と「階高4,000mmの階段」を比べると分かりやすいです。下図をご覧ください。
・利用者用階段②(6mスパン)の描き方
1階部分は階高4,000mmの階段とそのまま同じものを描きます。
次に、2階も1階と同様に描きます。しかし、階段を1.5回転する場合、35段分描くこととなってしまうため、段数が多くなってしまいます。階高5,000mmの階段を上り切る必要段数は32段であれば十分なので、2階の最後の「3段分」だけ減らすという段数処理を行います。
次は、管理用階段について解説します。
・管理用階段の描き方
この1.5回転の回転階段は段数25段で構成されています(最低25段必要なのでOK!)
踏面240mm以上・蹴上200mm以下・階段幅及び踊り場を1,200mm以上を確保できている階段です。
管理用階段も同様にして「階高5,000mmの階段」と「階高4,000mmの階段」を比べると分かりやすいです。下図をご覧ください。
・管理用階段の描き方
管理用階段の場合も階高4,000mmと同様の階段のサイズです。よって、階高5,000mmの階段はすべて階高4,000mmを1.5回転したものとして描くことができます。
段数処理にあたって、一番外側の階段線(赤線)を描かずに「左側」の踊り場に中線(水色線)を加えることでコーナー踊り場にしましょう。※右側の踊り場に描くのはNGです。1階部分の階段は数段以降省略表記となり、2段踊り場であることが視覚的に見えなくなってしまい、階段の段数としてカウントされなくなってしまいます。
管理用階段は描き始める最初の段階ですでに段数処理を行っているため、階段の修正は必要ありません。よって、1階と2階は同様の寸法の階段を描けば完成となります。
・さいごに
いかがでしたでしょうか。階高5,000mmの階段はすべて階高4,000mmを1.5回転したものとして描くことができます。なので、階高4,000mmの階段を丁寧に描けることができれば、あとは段数処理で対応可能となります。
一方、階高5,000mm程度であれば折り返し階段・1回転階段でも計画しようと思えば出来ますが、1ブロック内で階段面積の占有率が高くなることで要求室を圧迫してしまうことがあるので、解説通り「1.5回転」階段を描きましょう。
今回扱った1.5回転の階段については、上下階の階段室の出入り口の位置が異なるため、エレベーターと併設する際には出入り口の位置が重複しないようにエスキスの段階で赤矢印のメモをしましょう。
また、少なくとも一日につき一回は時間を測って今回扱った3種類の階段を描くことで階段マスターへの第一歩を目指しましょう。特に階高5,000mmの階段を描くことに苦手意識が高い受験生が多い中で、階段を素早く描けるようになれれば確実に周りとの実力差をつけることができます。
以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
お役に立てられたらうれしいです。