今回は「階高4,500mm」の階段について学んでいこうと思います。
製図試験では要求室の特記事項の中で天井高や階高が指定される可能性があるため、自分で階高を設定する必要があります。階高4,000mmの場合の階段を描くことは基本となる一方で、500mmだけ高さが変化した階段を描くことを苦手とする受験生は非常に多いです。
試験採点官は階段の寸法や段数が合っているかを必ず採点するため、階段と高さの不整合が起きている場合には欠格要件に該当します。したがって、今回の階段パターンも正確に把握して確実に描き切れるように練習しましょう。本記事を読むことで、他の階段パターンにも応用できる考え方を習得できるので、ぜひ最後まで読んでください。
では、解説していきます。
・階高4,500mmの階段寸法と必要段数
・利用者用階段①(7mスパン)の描き方
・利用者用階段②(6mスパン)の描き方
・管理用階段の描き方
・さいごに
まず、基本的な階高である4,500mmの場合について利用者用・管理用で分けて考えます。
・階高4,500mmの階段寸法と必要段数
利用者用：踏面300mm・蹴上160mm・階段及び踊場幅1,400mm
階高4,500mm÷蹴上160mm＝28.125段 → 29段 (踏面枚数は28枚)
管理用：踏面240mm・蹴上200mm・階段及び踊場幅1,200mm
階高4,500mm÷蹴上200mm＝22.5段 → 23段 (踏面枚数は22枚)
円滑化誘導基準に基づく利用者用階段・建築基準法施行令に基づく管理用階段の寸法によって、階高4,500mmの場合に必要な階段の段数は、利用者用29段・管理用23段となりました。これらの階段寸法と段数について理解すれば、階高4,500mm階段を描けるようになります。
・利用者用階段①(7mスパン)の描き方
階高4,500mmの場合の利用者用階段①は「7mスパン」に非常に相性が良いです。
この階段は段数30段で構成されています(最低29段必要なのでOK！)
踏面300mm以上・蹴上160mm以下・階段幅及び踊り場を1,400mm以上を確保できている階段です。この階段の描き方を次の表でまとめたのでご覧ください。
・利用者用階段①(7mスパン)の描き方・まとめ
【手順】
①：柱壁芯から2,000離して線を引く(2コマ離す)(手すり:仮線)
①’：手すり壁の厚さを300確保する。(階段の枚数の１段分)
②：①で引いた線を外側300だけオフセットした線を引く(手すりは中線で描く)
③：②で引いた段差の線の間にある踏面の枚数を振り分ける。
条件：段数29段(＝踏面枚数28枚)以上かつ踏面300以上を満たすように、踏面の枚数を振り分ける。上の例でいえば、段数を30段(踏面枚数は29枚)かつ踏面300以上となる組み合わせより、29枚＝水平方向12枚×２＋垂直方向1枚×2＋コーナー踊場１枚×3と踏面枚数を振り分ける。※( )は階段の踏面としてはカウントしない。あくまで階段へ上がり下がりする床として考えるので、階段の踏面として考えない。
④：②で引いた線の10等分する階段の内側を内側300だけオフセット線を引く。
⑤：2等分(赤線)→4等分(水色線)で8等分する。
⑥：上り表示を描いて完成！(特定防火設備の表記を忘れずに)
・利用者用階段②(6mスパン)の描き方
階高4,500mmの場合の利用者用階段②は「6mスパン」に非常に相性が良いです。
この階段も利用者用階段①と同様に段数30段で構成されています(最低29段必要なのでOK！)
踏面300mm以上・蹴上160mm以下・階段幅及び踊り場を1,400mm以上を確保できている階段です。この階段の描き方を次の表でまとめたのでご覧ください。
・利用者用階段②(6mスパン)の描き方・まとめ
【手順】
①：柱壁芯から1,750離して仮線を引く(「囲」の漢字みたいに)
②：①で引いた仮線をもとに「ロ」の字の手すりと段差の一本線を描く。
③：②で引いた段差の線の間にある踏面の枚数を振り分ける。
条件：段数29段(＝踏面枚数28枚)以上かつ踏面300以上を満たすように、踏面の枚数を振り分ける。上の例でいえば、段数を30段(踏面枚数は29枚)かつ踏面300以上となる組み合わせより、29枚＝水平方向８枚×２＋垂直方向５枚×２＋コーナー踊場１枚×3と踏面枚数を振り分ける。※( )は階段の踏面としてはカウントしない。あくまで階段へ上がり下がりする床として考えるので、階段の踏面としては考えない。
④：③で計算した踏面の枚数を考えて、水平方向:2等分・垂直方向:5等分する。
④’：5等分する場合は、内側300だけオフセットした後に3等分すればOK！
⑤：水平方向の階段をさらに「4等分」する。(これで8枚を8等分完了)
⑥：上り表示を描く→完成！(特定防火設備の表記を忘れずに)
・管理用階段の描き方
階高4,500mmの場合の管理用階段は「すべてのスパン」に対応可能です。
この階段は段数23段で構成されています(最低23段必要なのでOK！)
踏面240mm以上・蹴上200mm以下・階段幅及び踊り場を1,200mm以上を確保できている階段です。この階段の描き方を次の表でまとめたのでご覧ください。
・管理用階段の描き方・まとめ
【手順】
①：柱壁芯から1,300離して線を引いて(踊り場有効1,200)、手すりも描く。
②：階高4,500に達するのに必要な段数を計算して枚数をチェックする。(↑図の右上に記載)
条件：段数23段(＝踏面枚数22枚)以上かつ踏面240以上となるように、踏面の枚数を振り分ける。上の例でいえば、段数を23段(踏面枚数は22枚)かつ踏面240以上となる組み合わせより、22枚＝水平方向10枚×２＋コーナー踊り場２枚と踏面枚数を振り分ける。※( )は階段の踏面としてはカウントしない。あくまで階段へ上がり下がりする床として考えるので、階段の踏面として考えない。
②’：踊り場に中線を引いてコーナー踊り場２枚とする。
③：①で引いた線の10等分する階段の内側を内側240だけオフセット線を引く。
④：③で引いた線の内側を2等分した後に4等分する。(踏面8枚分が現れる)
⑤：上り表示を描く。
⑥：完成！(特定防火設備の表記を忘れずに)
ポイントは、階高4,000mmと同様の管理用階段のサイズ(5,000×3,000mm)であることです。直階段の部分の踏面枚数を10枚+踊り場を2枚に分割すれば出来上がるので、比較的覚えやすい階段の描き方ですね。
・さいごに
いかがでしたでしょうか。階高4,500mmの描き方やその手順について整理できたら幸いです。階高4,000mmと同様に、まず「必要な階段の段数」を計算して、その段数のマイナス１である「踏面の枚数」を階段の形状(ex.折り返し階段・１回転階段 etc.)に応じて図を描いて割り振る、という基本ルールに従って階段を描きましょう。もし本番で焦って階段の寸法を忘れた場合でもその場で思い出せるように訓練しましょう。
また、階段は眺めていても中々描けるようにならないので、最低一日につき一回は時間を測って今回扱った３種類の階段を描くことで階段マスターへの第一歩を目指しましょう。
以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
お役に立てられたらうれしいです。
