今回は、「柱寸法の決定」についてお話します。
製図試験においては通常、計画建物の柱のサイズは800mm角として描くことがほとんどです。作図においては、1/200の縮尺であればテンプレートで4mm角を記入することになりますね。一般的には階ごとに柱の大きさを変える必要はなく、3階建て・基準階型であってもそのサイズを変更する必要はありません。
ただし、1階の階高が上階よりも極端に高い場合(ex.天井高6m超の大空間)には、柱の大きさをワンサイズ大きくする必要があります。特に記述の問題で「Q.大空間において構造的に配慮したことは何か?」と出題された場合に「柱の大きさ」について言及する必要があります。大空間における柱の寸法の構造計画について簡単に解説します。
通常、柱のサイズは建築基準法上、以下のように定められています。
RC柱の小径は(構造耐力上)主要な支点間距離の1/15以上とする。(令77⑤)
例えば、通常の7mスパンで考えた場合には、
7m × 1/15 ≒ 467mm → 500mm 必要となります。
これはあくまで建築基準法上最低の数値であって、製図試験で出題されるような建物の規模ではこの柱の小径では強度が不足しています。製図用紙には柱のサイズは必ず800mm角として描きましょう(ここまでは大前提)。
一方で、天井高6m超の大空間である場合の柱については構造的に配慮していることを表現するために柱のサイズを1,000mm角に変更しましょう。
その理由として、天井が高くなる分だけ柱の長さが長くなります。特に最下階である1階の柱は、上階である2階・3階又は基準階の建物荷重を支えるにあたって必要な構造耐力が求められます。
具体的に言えば「座屈(耐力)荷重」(=応力が加えられたときに座屈する限界の荷重)です。階高が高くなるにつれて柱の形状は細長くなるため座屈耐力荷重は小さくなります。よって、柱の「小径」をできるだけ大きくする必要が生じます。
「座屈」とは、部材と平行方向に一定の力が加わった場合に、部材がはらむように変形する現象のことを指します。厳密に言えば、「たわみ」の現象が起き始める瞬間のことを指します。(物理の力学でいうと、「静止摩擦力」のような一定の力を徐々に加えていく過程で、それまで止まっていた物体が動き始める瞬間の力であると思ってもらえば!)
座屈耐力荷重について考えた場合、RC柱部材の小径・断面積とはどういった関連性があるか数式を使って考えてみましょう。次の図はRC柱を上から眺めた断面図です。
学科試験の復習ですが、断面2次モーメント「I」は断面積(bh)に比例しているといえます。次に、座屈耐力荷重「P」は、「断面積(b×h)」に比例して「柱の長さ(ℓ)」に対して反比例します。
このことから、RC柱部材のサイズが大きいかつ長さが短いといった2つの特徴を持った形状であれば座屈がしにくく、構造耐力上十分であるといえることができます。
したがって、天井高が高い大空間を計画する場合において建物の構造計画として配慮したことを記述などでアピールしたい場合には、以下のように記述しましょう。
・大空間を計画するにあたって天井高さが極端に高くなるため、RC造の柱の断面積及び細長比などに相関する座屈耐力荷重を考慮して、柱の小径を1000mmとすることで構造耐力上十分な計画となるよう配慮した。
いかがでしたでしょうか。
製図試験では800mm角の柱を描くことが定石です。
一方で、大空間といった自由度の高い室空間を計画する際には、RC柱にはその分高い強度構造計画にする必要があります。「柱単体」に関する寸法や構造について記述で求められた際には説得力のある文章で答える必要があります。柱の断面積や細長比などの「座屈」の内容を思い出しましょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。