エスキス基礎

駐車場(P)・駐輪場(BP)計画

今回は、建築可能範囲でキーポイントとなる「駐車場」「駐輪場」の計画について学習します。これら2つは、問題の中で“屋外施設”として指定されることもあれば、屋内駐車場など”要求室”として特記事項とともに出題されることがあります。建築可能範囲を考えるうえで最も大事な内容となるので最後までご覧ください。

では、さっそく始めていきます。

目次

①駐車場の寸法

②駐車場の計画

③駐輪場の寸法

④駐輪場の計画

⑤まとめ

 

 

①駐車場の寸法

駐車場は上の2種類で計画します。

・車椅子使用者用 芯 5.0m×3.5m

・メイン・サービス用 芯 5.0m×2.5m

両方とも、芯々寸法で考えて大丈夫です。

車椅子使用者用は、メイン・サービス用などの普通の駐車場よりも横幅1m大きく計画します。自動車本体の寸法は両方とも変わらないため、幅は5.0mで同じですが、車いす使用者が乗降するスペースを確保するために横幅を1m大きく計画することが必要です。本試験問題によっては、駐車場の寸法やサイズが指定される場合があるため、その場合は従ってください。

 

②駐車場の計画

駐車場を計画するのに、「駐車方法」がポイントとなります。方法は2つあります。

 

駐車場は、①並列で駐車する場合、②対面で駐車する場合の2パターンを主に使います。駐車場を計画するときは、駐車場の他に必ず敷地内に駐車場へ至る車道を計画します。車道がないと物理的に駐車場に入れません。(※串差し駐車を除く)

 

①並列駐車を計画する場合、駐車場の短辺は2.5mなので、2台並べると5mとなります。さらに、駐車場へ至る車道(▽:入出庫の位置)を計画します。このとき、車道のサイズは駐車場1台分と同じです。(車道:駐車場1台あたり2.5m×5.0m)

よって、建築可能範囲を考えるときは5m×10mの長方形の箱を用意しましょう。駐車場は道路に面した位置にあるので、道路斜線でセットバックが大きく必要とする問題(基準階など)で活用できます。

 

②対面駐車の場合車道を兼用可能なので、1台分の車道を計画すればいいです。よって、2.5m×15mで計画すればいいのですが、建築可能範囲を考えるときはメートルの整数倍で考えるので、3m×15mの長方形の箱として考えます。

大きな間口を必要とするので、敷地間口が広い場合や建物主出入口の幅の合計が小さい場合などで活用できそうです。

 

 

駐車場を計画するにあたって、1階平面図を非常に大きく計画しなければ要求室が入らない場合に、できるだけ多くのグリッドを計画した関係で不整形な建物になることがあります。

その場合には、道路側に対して1グリッド分以上のスペースを確保し、道路から正面に入出庫する串差し駐車を行います。ただし①②と同様に、車道は駐車場1台分のサイズで確保することが条件なので、道路境界からは空きが最低10m必要となります。

③串差し駐車の場合、駐車場を直接道路に面して計画すれば、前面あるいはバック駐車は物理的に可能です。しかし、前面道路の上でハンドルを何度も切り返して入庫する必要があるため、道路の交通を妨げるおそれがあります。

製図試験では駐車場計画としては不適切と判断されます。実務では敷地面積の活用として有効ですが、製図試験では減点扱いとなる可能性があるため注意しましょう。自動車が入出庫するために必要な車道を計画してください。

また、道路側の1グリッド内でピロティ駐車場としても計画できます。万が一、駐車場計画をうっかり忘れた場合は緊急措置的に2台分の駐車場を計画できます。一応、テクニックとして押さえておきましょう。

 

建築可能範囲において、駐車場を考える場合は原則①並列駐車と②対面駐車を考えることをおすすめします。それでもエスキスがまとまらない場合や駐車場計画を忘れていた場合などといった緊急回避措置として③串差し駐車を考えてください。

 

③駐輪場の寸法

駐輪場の寸法は、1台あたり0.5m×2.0mです。駐輪場を10台計画する場合は、2m×5mの駐輪場のスペースを確保する必要があります。

 

④駐輪場の計画

駐輪場も同様に、自転車専用の”車道”を設けることが必要です。自転車であっても、法律上”車両”であることには変わりがないので、駐車場と同じ考え方です。

よって、歩行者の動線と交差しないようにすることで安全性に配慮し、駐輪場1台に対して同じサイズの自転車専用の車道を設けます。車道、といっても自転車から降りた人は歩行者なので、自転車を利用する歩行者専用の”通路”といった方が正確であるかもしれません。

 

道路からの入出庫は、駐車場の場合と同じです。①並列駐車の場合は、4m×5m、②対面駐車の場合は3m×6m(2.5m小数点切り上げ)、ということになります。

 

⑤まとめ

①~④の駐車場・駐輪場計画に必要な寸法をまとめると、以下のようになります。

これらの寸法の最小値は3mです。従って、道路からへり空き3mを確保することで、合計15m+6m=21m間口の駐車・駐輪場スペースを考えることができます。

よって、北側一面接道の敷地の場合、屋外施設を考慮した建築可能範囲は以下のように考えられます。

 

東西方向50m、南北方向35mの敷地で、北側が道路、その他は隣地に面している場合です。建築可能範囲を考えるときは、建物の出入り口から道路まで避難上有効な敷地内通路1.5mを確保するために、隣地とのへり空きを2m確保してください。ここで、〇印マークは「変更可能」という意味です。(スパン割にあと1m足りないときに2m→1m、屋外テラスや屋外避難階段を設ける場合に2m→3mにする、スパン割りをした結果余ったので2m→5mにする、など)

□印マークはへり空きの値に理由がある場合に示します。

そして、駐車場・駐輪場計画によって、短辺3m×長辺21m必要であることが分かったので、北側道路に面した位置の間口で、歩行者・利用者がアプローチ可能な範囲は、46mー21m=25mということになります。この範囲で6mや7mスパン割を決めることで建物主出入口やエントランスの範囲が自然と限定できますね。あとは要求室や建築面積、延べ面積が指定範囲内に整合するか、チェックしてみてください。

 

 

以上が、駐車場・駐輪場計画となります。

最初にメイン・サービスアプローチを決める手掛かりとして、駐車場(P)や駐輪場(BP)は一見無関係であるように思われますが、駐車や駐輪の仕方によっては建築可能範囲が定まり、また、アプローチ可能範囲も限定されます。これら2つの屋外施設は、エスキスにおいて実は非常に重要なパーツなのです。

今回は、建築可能範囲について②対面駐車の場合で考えましたが、①並列駐車の場合についても“スペアプラン”として描いて考えてみてください。たった1通りのエスキスプランを作成するよりも、2通りのやり方を並行して考えることで、非常に有利にプラン構成を進めることができると思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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