今回は製図試験対策で理解が不可欠な「集団規定」についてお話します。
・「単体規定」と「集団規定」
・集団規定の目的
・試験で必要な集団規定の知識
・まとめ
「単体規定」と「集団規定」
「単体規定」とは、建築物単位で、すべての個々の建物に対してかけられる規定のことです。いわゆる技術的な基準のことで、例えば、住宅の構造や防火、避難など、北海道から沖縄まで、全国どこでも一律に合わせなければいけない規定です。
「集団規定」とは、全国一律に義務付けられる法律ではなく、都市計画区域・準都市計画区域内にのみに適用されます。それぞれをまとめると次のようになります。
「単体規定」: すべての建築物が対象。建物本体の規定。
「集団規定」: 一部の建築物が対象。本体以外の外部環境の規定。
集団規定の目的
集団規定とは、建物に関する規定ではなく、周辺環境(日照や通風など良好な環境を構成する要素)の保全という目的のために作られた規定です。
例えば、「容積率」を規定する目的を考えてみましょう。以下の2つが考えられます。
①人口密度の制御
②道路内の交通量の抑制
①によって、人口が過密な地域(ex.商業系)と過疎な地域(ex.住居系)を分け、ビジネス街と住宅街を明確に区分を行うことで人々のニーズによる住み分けが可能となります。落ち着いた自然豊かな場所に家族と一緒に住みたい人もいれば、職住近接を重視した単身者で会社の近くに住みたい人もいますよね。
一方②において、幅が大きい道路には交通量が多く、幅が小さい道路には交通量を少なくする必要があるため、指定容積率だけではなく道路幅員による容積率を計算しますよね。道路事情によって集団的な規定(建物だけではなく外部環境に配慮した規定)をするのです。よって、”容積率”は”集団規定”に分類されます。建ぺい率や高さ制限も同様の考えですね。
試験で必要な集団規定の知識
製図試験では与えられた問題文によっては、集団規定が適用されないことがあります。
・「敷地は都市計画区域外とする。」 → 原則、集団規定が適用されない。
計画建物の敷地は、①「都市計画区域」・②「準都市計画区域」・③「都市計画区域及び準都市計画区域外」のいずれかに分類されます。ここで、③「都市計画区域及び準都市計画区域外にある」となっている場合は、集団規定が適用されません。
製図試験で関わってくる集団規定の内容は以下の通りです。
・建ぺい率
・容積率
・高さ制限(道・斜、北・斜、隣・斜 など)
この他にも43条の接道義務なども入ります。しかし、製図試験では敷地の接道間口が2m未満の旗竿地、なんて問題の出題のされ方は可能性としてほぼ0なのでスルーでかまいません。
次は、H25「大学のセミナーハウス」の本試験問題の一部です。
(3) 敷地は、都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内にあるが、景観保全のため建築物に関して次の制限がある。
① 建ぺい率の限度は60%、容積率の限度は200%である。
② 主要な屋根は、 2/10 以上の勾配屋根とする。
敷地は③都市計画区域等以外の区域内にあることから、集団規定は適用されません。
したがって、原則通り考えれば建ぺい率・容積率・高さ制限などは無し、ということになりますが、景観保全のために、建ぺい率・容積率ともに規定しています。しかし、道路斜線制限や北側斜線制限などの高さ制限は適用されないため、セットバックする必要はありません。
建ぺい率・容積率・高さに関する制限が全て無い、といった問題では設計の自由度が高くなってしまうことが想定されるため、個別に規制するといった出題のされ方もあるということを頭に入れておきましょう。
まとめ
・「集団規定」とは、全国一律に義務付けられる法律ではなく、都市計画区域・準都市計画区域内にのみに適用される。
・「集団規定」とは、建物本体以外の外部環境を決定する要素(建ぺい率・容積率・高さ制限など)に関する集団的なルールである。
・「都市計画区域等外」では、集団規定は適用されないが、個別の要素を規制する出題のされ方がある。
いかがだったでしょうか。「集団規定」は、建物以外すなわち外部環境についての話なので、外部環境を計画する地域内(都市計画区域等内)のみが対象です。イメージは「建物の外」、と抑えておけばすんなり頭に入るかと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。