エスキス基礎

受水槽寸法の計算方法

今回は”受水槽寸法の計算方法“について勉強します。製図試験の問題で給水方式としてポンプ直送方式を指定された場合、明確な根拠を持って受水槽のサイズを計画する必要があります。

また、「受水槽室」を考えるときにも重要な内容となります。受水槽のサイズを決定した後、加圧ポンプの設置スペース・点検スペースの寸法を考慮して受水槽室を計画しなければなりません。

なんとなく、受水槽室はざっくり30㎡くらい…、と考えてしまうと、記述の問題で計算式を空欄穴埋め形式で求められた際に手詰まりとなってしまうので、今回の学習で事前に内容整理をしておきましょう。

受水槽の計画内容は実務でも役に立つので、自分で建物を設計するつもりで給水設備で計画するんだ!という意識で臨んでもらいたいと思います。では、始めます。

 

POINT①

受水槽のサイズは「利用人数」で決まる。

大前提として受水槽のサイズは、「給水の利用人数」で決まります。実際にキッチンやトイレ、洗面、浴室など使い方はなんであれ、生活用水を使う利用人数をベース考えます。

利用人数、といわれても実際の試験問題では特に〇人用、などの指定はされません。したがって建物規模を表す床面積の合計によって建物を利用する人数を判断します。指標となるのが、建物用途に応じた「人口密度」を考慮します。人口密度の目安として、事前に出題される建物の用途によって分類されます。

 

用途によって分類される人口密度

図書館・美術館・コミュニティセンター系

・・・0.3(人/㎡) ⇦ ( ≒ 3.3(㎡/人) から算出 )

事務所

・・・0.15(人/㎡)  ⇦  ( ≒ 6.7(㎡/人)から算出 )

 

学科試験の計画分野の内容を覚えているでしょうか。1人あたりに必要な床面積の暗記をしましたね。図書館系であれば1人あたり3.3㎡、事務所であれば1人あたり6.7㎡必要、といったお話です。

1人あたりの必要面積の「逆数」を考えたものが『人口密度』です。1㎡あたり何人存在するのか、を考えます。

したがって、床面積の合計をS(㎡)とすると、人口密度a(人/㎡)を乗じて建物全体の利用人数はa(人/㎡)×S(㎡)=aS(人)ということになります。

 

 

POINT②

実際の建物利用比率(0.7)を乗じる。

事務所であればレンタブル比その他の用途に関しては利用比率を70%であると仮定します。したがって、建物全体の利用人数aS(人)に対して0.7を乗じると、aS(人)×0.7=0.7aS(人)という実際の建物利用人数が算出されます

一日中ずーっと建物内に人がめいいっぱいいるとは限りませんからね。ただし、利用比率に関しては簡便的に70%としましたが、利用する建物によってケースバイケースなので出題テーマに応じて各自で考えてください。

 

POINT③

用途に応じて水量が普通・多いで場合分けして、「建物全体」の1日の使用水量を算出する。

建物の用途(事務所・共同住宅・ホテル・温泉施設・etc.)に応じて使われる水量は大きく変化します。したがって、製図試験対策として、1日当たりの給水量が普通の場合(事務所・図書館・コミュニティセンター系)と多い場合(共同住宅・ホテル・温泉施設系)で大別します。

 

①普通の場合(事務所・図書館・コミュニティセンター系)・・・70ℓ/(人・日)

②多い場合(共同住宅・ホテル・温泉施設系)・・・300ℓ/(人・日)

 

事務所や図書館などといったトイレや洗面を主として利用する場合には、必然的に利用する水量が少ないため、1人あたりの1日使用水量は40ℓ~100ℓとなるので、その中間値として70ℓを採用します。

一方で、共同住宅・ホテルなどは浴室やキッチンなど利用水量が非常に多く、また、利用するピーク時間帯も考慮して1人あたりの1日使用水量として300ℓを採用します。

 

さっき算出した実際の建物利用人数である0.7aS(人)が1日あたりに使用される水量を利用するので、単純に乗じて建物全体の1日あたりの使用水量を求めます。

事務所の場合、1人あたりの1日使用水量70ℓ・事務所の人口密度a=0.15なので、

{0.7×a(=0.15)×S}(人) × 70ℓ/(人・日)=7.35S(ℓ/日)

という建物全体の1日あたりの使用水量が求められました。

実際には課題発表の時点で用途が指定されるので、事前にチェックしましょう。

 

 

POINT④

受水槽は1日使用水量の半分のサイズとし、貯水率の逆数を乗じて実際の受水槽のサイズを求める。

建物全体の1日使用水量の”半分”受水槽のサイズとします。事務所である場合は、約7.35S(ℓ/日)が必要でしたので、受水槽のサイズはその”半分”である7.35S/2(ℓ/日)となります。

受水槽の”内部貯水率”を考えると、容量の8割の水を貯留することから、0.8の逆数を乗じて、7.35S/2×1/0.8 ≒ 4.59S(ℓ/日)となります。

 

 

POINT⑤

床面積の合計Sを代入する。

「床面積の合計を3,000㎡以上3,600㎡以下とする」と問題文で与えられた場合、その中間値3,300㎡を代入します。事務所の場合、

4.59(ℓ/日)×3,300(㎡)=15,147(ℓ/日)

つまり、約15000ℓが必要となることが分かったので、あとは3数の積になるように因数分解します。

15,000ℓ=15㎥(1㎥=1,000ℓより)=3m×2.5m×2mサイズの受水槽が必要です。(4m×2m×2mなどでもOK)

 

受水槽を設置する際に必要な6面点検スペースは、受水槽周壁・底部で600mmオフセット、受水槽上部の点検口で1m必要となります。

製図試験では、階高は通常4mで設定します。大梁の下である梁せい800mmを考慮すると、天井高の有効寸法はFL+3.2m程度となります。したがって、高さ2mの場合には受水槽上部および底部の点検スペースを考慮し、有効高さが3.6m必要となるため、受水槽を梁下には設置できません。

製図試験では、大梁・小梁下以外の天井高が高い空間に受水槽を設置することを前提に考えます。

受水槽室を計画する場合にはなんとなく整形な空間を作るのではなく、大梁と小梁の位置を確認しながら受水槽室を配置をしましょう。

小梁に関しては、スラブの短辺が4m以下になるように配置をする、というのが製図試験の構造的なルールなので、基準階建物で受水槽のサイズが非常に大きくなる場合には、幅と奥行き両方が4m以上にならないように注意しましょう。(幅4m×奥行き4m×高さ2mの受水槽は小梁下に配置せざるを得ないので上部点検スペース1mが確保できないことになる。)

 

まとめ

①受水槽のサイズは”利用人数“で決まる。

②”利用人数”は用途別の人口密度a(人/㎡)×床面積の合計S(㎡)で算出し、建物利用比率0.7を乗じて実際の利用人数を0.7aS(人)を算出する。

③水量が普通・多い場合で「70ℓ」「300ℓ」を乗じる。そのときに用途別の人口密度a(人/㎡)を決定し、1日使用水量を算出する。

1日使用水量の半分を受水槽の容量とし、貯水率0.8の逆数を乗じてから床面積の合計Sを代入して必要な受水槽寸法(幅○m、奥行△m、高さ□m)と因数分解する。(幅・奥行は一方4m以内とする)

⑤6面点検スペースを考慮して必要有効の受水槽室サイズを決定する。

 

以上で、受水槽寸法の計画でした。次回は受水槽に必要な加圧ポンプの寸法計画について解説したいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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