今回は給水方式の一つである『水道直結増圧方式』について解説します。
製図試験対策上、特に給水方式において「水道直結増圧方式」と「ポンプ直送方式」は必要不可欠な内容となります。今回は水道直結増圧方式を中心に解説します。
では、始めていきます。
目次
・水道直結増圧方式とは
・水道直結増圧方式の利点
・水道直結増圧方式に必要な設置スペース
・まとめ
・水道直結増圧方式とは
まず、水道直結増圧方式とは、水道本管から接続した給水管から増圧ポンプによって給水する方式のことをいいます。通常、3階建ての建物であれば、水道本管による圧力のみを利用して所定の給水箇所に供給しますが(水道直結直圧方式という)、製図試験では3階建てといっても大規模であるため、多くの給水圧力を必要とします。したがって、水道直結型である場合、増圧ポンプによる水道直結増圧方式を採用します。
逆流防止弁(略:逆止弁)は、管内圧力が負圧となってしまった場合(蛇口から水を吸い込んでしまう向き)に、水の逆流を防止するために設置する弁(バルブ)のことを言います。増圧ポンプのばねによって給水圧力を増加させるポンプより前の位置に設置する必要があります。つまり、増圧ポンプよりも前、水道本管側に設置します。逆流してしまった水が水道本管へと流れるのを防ぐためです。
メーターに関してはポンプの前後どちらの位置に設置してもOKです。(親メーターor子メーターによって変わる)試験対策上は重要でないので、頭の片隅において構いません。
・水道直結増圧方式の利点
水道直結増圧方式を採用するにあたり利点が多くあります。
①受水槽の設置スペースが不要で、建物床面積を有効利用できる。
②水質低下等の衛生上の問題が少ないため安全性が高い。
③水道本管の圧力を利用できるため省エネ性が高く、経済的である。
①②③どれも”ポンプ直送方式”と比べることができる内容となります。
①については、受水槽そのもの、そして点検スペース(平面600mmオフセット)などがすべて不要となるため、エスキス計画に余裕がない場合に非常に有効となります。ポンプ直送方式を採用する場合には、”受水槽室”と”加圧ポンプ室”が必要となるため、それぞれ合計の床面積は最低でも20㎡以上(4m×5mなど)必要となります。管理ゾーンが圧迫していて計画のめどが立たない場合には、水道直結増圧方式を採用する方針を切り替えましょう。
(注 : 給水方式に関して特に指定が無い場合に、実際に受水槽が計画できるスペースがあれば、ポンプ直送方式を採用した方が望ましいです。断水時に受水槽内の貯留分の上水を供給できたり、給水の利用時間帯が同じで複数箇所で集中する場合に安定した圧力で供給できるため。マンションの場合は夜間にシャワーを使うし、飲食店が入ったテナントビルの場合は営業時間に給水利用が集中するので、あらかじめ受水槽に貯めた方が給水不足の可能性が低くなるため。)
②については、受水槽内の汚染リスクが全くないからです。もちろん、給水管内の汚染リスクは両方式ともありますが、受水槽そのものがないため、受水槽にある通気管や点検口からの空気感染がないため衛生上安全であるといえます。
③では水道本管の圧力をそのまま利用できます。水道本管からの圧力にプラスして増圧ポンプで汲み上げることで、ポンプ動力を削減することが可能なので省エネルギー性が高く経済的です。また、受水槽の場合には、設置によるイニシャルコスト、維持管理費用などのランニングコストが必要であるため、経済性に配慮、問題文にある場合は迷わず増圧方式を採用しましょう。
記述式で”採用した給水方式”として内容を問われることがあるので、上記の3点をまとめた内容を記述すればOKです。
採用した給水方式 : 水道直結増圧方式 |
・受水槽方式の一つであるポンプ直送方式に比べて、受水槽が不要で床面積の有効利用が図れるため、 |
水道直結増圧方式を採用した。 |
・水質低下等の衛生上の問題が少ないため安全性が高く、また水道本管の圧力を利用できるので |
省エネルギー性が高いことを考慮して計画した。 |
・受水槽設置によるイニシャルコスト及びその維持管理によるランニングコストが不要であるため、 |
特に経済性に配慮して採用した。 |
・水道直結増圧方式に必要な設置スペース
平面図で描くには、増圧ポンプのみ必要なので約5~10㎡程度です。設置スペースは最下階(主に1階)の階段下です。毎回、この定位置で描きましょう。
管理ゾーン内に増圧ポンプ室を作ってもいいのですが、デッドスペースでも発生しない限りは、原則階段下に増圧ポンプ室を作ります。増圧ポンプ室は毎回階段下、とルーティンを決めていれば書き忘れるリスクを防ぐことが出来ます。
メンテナンス用のドア位置を外壁に面して設けることで、管理ゾーン内の利用者が階段を利用する際に通行の妨げとならないように計画しましょう。
・まとめ
水道直結増圧方式を採用する場合には、必ず増圧ポンプ室を階段下に設けましょう。もし忘れてしまうと、設備計画が不十分であるみなされ、重大な不適合となってしまうため、一発失格となります。よって、毎回決まった位置(階段を作成時に同時に描く)など、あらかじめマイルールを作ることで試験本番の緊張時にも対応できます。
特に、水道直結増圧方式など給水方式については作図・記述双方とも製図本試験で必ずと言っていいほど出題されます。受水槽を伴うポンプ直送方式については次回に解説するので、それぞれの利点や特徴などを押さえることが合格への第一歩です。
それでは今回はこの辺で終わりにします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。